山本亭は、地元ゆかりの山本工場(カメラ部品製造)の創立者である山本栄之助翁の自宅でした。関東大震災後、当地に移り住み、以後4代にわたって使われていたものを、昭和63年に葛飾区が取得し、平成3年4月から一般に公開しました。
大正末期から昭和初期に増改築された、当時には珍しい二世帯住宅です。建物は、床の間・違い棚・明かり障子・欄間からなる書院造り、数奇屋風の天井、下端部は石張りで上部は白漆喰塗りの土蔵などの伝統的な和風建築と、壁には大理石のマントルピース、寄木を用いたモザイク模様の床、ステンドグラスをはめ込んだ窓、ガラス製ペンダント照明を用いた、昭和初期独特の洋風建築が複合されています。池泉・築山・滝などを設けた典型的な書院庭園も国内外を問わず高く評価されています。米国の日本庭園専門誌に紹介され、来日外国人もお見えになっています。
風情ある書院造に西洋建築を取り入れた、和洋折衷の建造物「山本亭」。
木造瓦葺き2階建ての随所に、大正から昭和にかけて、当時の建築様式の傾向が窺えます。
緑豊かな書院造の庭園は、山本亭の最大の見所です。
縁先に池を配し、背景には広がる常緑樹。耳をすませば、築山から落ちる滝の音が心癒してくれます。
鳳凰の間
寄木を用いたモザイク模様の床、白漆喰仕上げの天井、ステンドグラスの窓が用いられた、山本亭唯一の洋間です。客人をもてなす応接室として利用されていたことからも、当時の西欧文化に対する憧憬の念が感じ取れます。
居宅
庭園に向かう見晴らしのよい、心安らぐ空間です。ガラス戸やガラス欄間を多用することで開放感のある構造になっています。鳳凰の間を除き、すべての居宅は和風意匠で統一。中央の廊下を境とする二世帯住居の様式です。
武家屋敷に見られる伝統的な長屋門に、洋風の意匠を取り込んだ、和洋折衷の造りになっています。六角形のタイルが敷かれた床、ステンドグラスの窓など、洋風に装飾された和装建築に、建造当時の流行を垣間見ることができます。
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